音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~




「だから、今日はよく笑ってくれるんだね―――」


よく、笑う?

あたし、そんなに笑っていなかったの?


検査のあとだていつも通りにしていたつもりだったけど…… 何か違っていたか?


「パパー、まおちゃんって今まで全然笑わなかった…… というより、元気が無かったよね!!」


「ん、まおか?」


「そうだよ」


ちょっと、パパがそんなこと言うわけないじゃん。

あたし、ちゃんと笑っていたんだから。


「あー、検査のあった日は特にヒドイ顔してたな」


おいっ、ヒドイ顔ってどんな顔だよ。

この顔は生まれつきだって。


「診察室から出てきた後なんてヒドイものだよ。 全く喋ろうとしないし、話し掛けるなオーラが漂っているんだから」


あのー、その“話し掛けるなオーラ”を放っているのってもしかして――― あたしの事ですか?


「まぁ、結果が良くないんだからしょうがないとは思うけどね」


確かに今まで結果は良いものとは言えなかった。

でも、だからって…… あたしはそんなに分かりやすかった?

これでも隠していたつもりだったのに。




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