達人
「っっっっっ!」

一瞬にしてその出足を止められた。

…達人は一歩も動いていない。

足どころか、手すら後ろに組んだまま。

身じろぎ一つしていない。

そんな達人の…視線だけで動きを止められた。

別に睨まれている訳ではない。

表情にしたって、笑みすら浮かべている。

にもかかわらず、達人の体から発散される気配によって動きを制された。

殺気?

闘気?

わからない。

しかし紛れもなくそれは達人から発せられるもの。

そして否応なく、俺の闘志を挫くものだった。

まるで射竦められたように、腕も、足も、力が入らなくなる。

何かの術のようですらあった。

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