達人
「?」

俺は訝しげな表情を浮かべる。

茶の銘柄を訊いているのだろうか。

「そのような事より城山老人、実は折り入ってお話がありまして」

そう。

俺は茶を嗜む趣味はないし、何より老人の茶飲み友達として来た訳ではない。

そんな俺の話を遮り。

「実は丹下君…君の飲んだその茶…一服盛っているんですよ」

「!!」

その言葉に、絶句した。

毒!?

まさか!

いやしかし、おかしな味はしなかった。

だが、俺はこの茶を飲むのは初めてだ。

本当に毒が入っていないという確信は持てない。

冷や汗が流れ、毒を飲まされたかもしれないという不安に動悸がする。

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