達人
思えば、殺気が出すぎていたかもしれない。

俺は正座して相対したまま、城山老人を見据える。

対する城山老人は。

「……」

ニコニコと笑みを浮かべたまま、俺を見る。

覇気も、殺気もない。

縁側で日向ぼっこをしている、ただの爺さんだ。

こんな年寄りの、どこが達人だというのか。

そう思っていると。

「丹下君だったね」

城山老人が口を開いた。

その視線は、俺に出された湯呑み。

既に茶は俺が飲み干してしまっている。

「お茶は美味かったかね?」

「……」

どこまでものんびりした老人だ。

「ええ、まぁ」

適当に相槌を打っておく。

「そうかね。ところで…」

ずずず、と一口茶を啜り、城山老人が続ける。

「その茶…どこの茶葉かわかりますか?」

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