ヤギと羊のマイロード
一.再会というもの
「起立、礼!」
 
授業終了の号令と同時に、目が覚めた。
どうやら僕は、眠っていたみたいだ。
 
意識がハッキリしていたのは昼休みまでだから、長時間睡眠を貪っていることになる。
 
自分でもわかるぐらいの酷い寝癖を直していると
「めえぇ、めえぇ…。」
と一人の男子生徒が、ヤギの真似をしながら近寄ってきた。
 
ピンポイントに人の弱みに付け込んでくるこの男は、クラスの体育委員を務める、前原翔太(マエバラ ショウタ)。
小学校3年の時からずっと同じクラスで、一応親友だ。
 
「…翔太、前にそれはやめろって言わなかった?」
「悪ぃ悪ぃ、ちょっとした癖って奴だな。」
「…傍迷惑な癖だね。一刻も早く治ることを切に願うよ。」
「そんなことより健一、今日おまえん家でゲームやろうぜ。新作のゲーム、昨日買ったんだ。」
「どうやら君の頭の中には、『ゲーム>親友』という方程式が成り立ってるみたいだね。でもまあ新作ゲームに免じて、今回は許してあげるよ。」
「おまえも似たようなもんじゃねぇか…。」
「さぁ、そうと決まれば早速家に行こうか。」
 
そう言って椅子から立ち上がり、教室を出ようとする。
 
「待ちなさい!八木健一!」

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