恋 理~renri~
安 寧


昔から冷めていた私の人生って、どう振り返っても勉強と女友達しか浮かばない。




学生の頃は勉強をしながら、ただ周りに合わせてソレなりの経験をしていただけで。



絶対にスッキリと答えの出せる数式や、普遍的な物事を学べる物理が特に好きだった。



やればやるほど成果の出る勉強に費やし、ただ上を目指す事に躍起になってて。



愛なんて目に見えないモノをバカにして、いつでも心には鍵を掛けていたの。




そうして社会人になれば、今度は“女”を捨てる事で得られた対価が嬉しくて。



亜実を育てる幸せにプラスして、もうひとつの生き甲斐を見い出せたのが仕事。



だから恋愛なんて無用の長物で、1人で生きて行けるって思ってたのに――…





「で?どうだったのよ?」


「ど、どうって…、不躾じゃない?」


「何言ってんのよ、私のお陰でしょ?」


言われるがままに差し出したのは、我が家でもとっておきの高級ティー。



芳醇な香りが蔓延する中でも、味わう余裕を与えてくれないのは流石だわ・・・




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