恋 理~renri~
珍しく言葉が見つからないらしい大和の表情で、ソレは一目瞭然だもの。
「最後まで…、手を繋いでても良い?」
会社では“鉄の女”と囁かれているのは知ってるし、私も割と強い女だと思うけど。
どうしたって取り繕いが出来そうにない今日は、やっぱり甘えたいから…。
「ああ、離さないよ」
「ありがと・・・」
ムダに強がって心配させるよりも、大和の温もりを頼って目に焼き付けたいの。
少し力を入れて握り直してくれた貴方が傍にいてくれて、本当に良かった…。
それから開演までは何となく無言のままで時が過ぎ、いつの間にか時間を迎えて。
2人でイヤホンマイクを填めて、流れる音声ガイダンスへと意識を預けていた。
こうして今日観に来た目的といえば、【九代目・甲斐 蓮太郎特別公演】――
演目は“菅原伝授手習鑑”という、学問の神様として知られる菅原道真の話で。
平安時代に道真が九州の太宰府へと左遷された事件や伝説を描いた内容らしい。
次々と現れる役者は、独特な化粧を顔と髪に施して煌びやかな着物を纏っていた。