恋 理~renri~


ピタリと封の閉じられた真っ白な封筒は、開ける事にも躊躇ってしまうけど。



その不安を打ち消したくて、隣で見守るだけの大和を見上げれば目が合った。



するとコクンと頷いただけで何も発しない事に、彼なりの優しさが伝わって。



過去に負けていられないと、ピリ…と遠慮がちに開封して便箋を取り出した・・・




 【沢井 真咲・亜実様


初めまして…と言う権利が無いのは重々承知して、今回筆を取る事にしました。

君たちを悲しませ、同時に苦しめた者からの手紙など読んでは貰えないだろうが、こうして手紙をしたためる事を理解して欲しい。


まずは真咲さん、亜実ちゃん…、君たち2人の実父は間違いなく私だ。

そして君たちの母である麻由美は、私が生涯においてただ一人愛する女性で。

これは大学時代に麻由美と出会った時から変わらない、私の正直な気持ちだ。


だが…世間とかけ離れた梨園の世界では、麻由美を守れる力が当時の私には無かった。

…これも言い訳だな。何を言っても許されないが…、本当に申し訳ない――

麻由美とお腹の中に居た真咲を守るには、当時は甲斐の財力しか見つけられなかった。

両親の言いなりになって、既に用意されていた従兄妹との結婚に至った最低な私だ。


歌舞伎役者として大成するのを引き換えに、結局は麻由美も2人も苦しめて…、それでも彼女…麻由美を手放せなかった。】



「・・・っ」


大和に寄り掛かって、手紙を噛みしめるように見つめていけばグッと込み上げてくる。




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