恋 理~renri~



いつもなら大好きな音楽のお陰でで苦にならない通勤時間も、今日はまったく違う。



降りる駅まで、あと一駅に迫っているというのに。



たった数分のキョリが、ものすごく遠い気がした…。



それもこれも、すべては隣にいる男性のせいだと思う。




「・・・・・」


隣からジッと見られているから、下手に別の車両へ移動が出来ない。



もっともそんなことをすれば、失礼を上塗りするようなものだ。




話を振ってくれるなりすれば、営業の人間だし聞き上手なわけで・・・ 



だけれど彼は、話し掛けては来ず、ひたすら私を横から見ているだけ。




いや…、これって監視じゃない?



やっぱり、本当は恨まれているのね――




そんな彼の整い過ぎた容姿が、妙な迫力を増しているから。



隣で息を潜めて、到着の時を待つのも結構辛いのよ…。




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