My Mother
当時はひとりで乗る子供の為に『お子様ひとり旅』というのがあって、ひとりで飛行機に乗る子供たちが集められて客室乗務員さんと一緒に飛行機に乗り込む。おもちゃを貰えたりして淋しくならないようにしてくれる。あたしもそれだった。

集まっている輪に入る…お母さんはもう見えなかった。

『さあ行こうか』

乗務員さんがあたしの手を取る。

あたしは何度も何度も振り返った。

見えなくてもそこにお母さんがいる気がした。

でもいなかった。

ゴォーという飛行機のエンジン音、回りは知らない大人たちでいっぱい。少しずつ少しずつ動き出す機体。

『あ!』

その時、空港の最上階にあるデッキにお母さんが見えた。

小さな小さなお母さん。

『あれ、あたしのお母さんだよ!だってお母さん赤い服着てたし、あたしわかるもん!お母さんだよ!手振ってるよ!』

あたしは夢中で隣の知らないおばさんに話掛けた。

『あたしにわかるかなぁ、見えるかなぁ』

あたしは必死に窓の外のお母さんを見た。

あたしも手を振る。

お母さん…。

どんどん遠くなるお母さん、どんどん見えなくなるお母さん。

その時体がふわっと浮いた。

飛行機はどんどん上昇し、お母さんは見えなくなった。

『ひとりで飛行機乗るなんて偉いね』

隣のおばさんはあたしにそう言った。

でもあたしは何も見えなかった。

涙が止まらなくて目の前の景色が歪んで見えた。

ただ隣のおばさんがあたしの頭を撫でてくれた感触だけが伝わった。

その手があったかくて、また涙が出た。

お母さん…あたし頑張る…。

あたしは心に誓った。

真下にはたくさんのビルや家が指で掴めるくらい小さく見えた。

雲を突き抜けたその上は太陽が近くて眩しかった。青空がどこまでも続いていた。

でもあたしの心はどしゃ降りの雨だった。

『お母さん…』

あたしの目からまた涙が溢れた。
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