other contract

other contract -mark 4- 金司目線




紙とインクの臭い。
腹部からの鈍い痛みで目が覚めた。

今までより軽くなった体に疑問を抱きながら、辺りを見渡す。
埃だらけの本に本棚。
それに俺の横には‥‥

「華‥っ!!」

俺は倒れていた華を抱き抱えた。
華は手首から血を流し、首には何かに閉められた後が。
良く見ればそれは手の形をしていて、俺は恐る恐る自分の手を華の首に当てた。

「‥な、」

言葉が出てこなかった。
その手形と俺の手の大きさが、ぴったり合ったから。

一体、華に何があったんや。
俺自身にも。

確か‥華が此処の校舎の廊下にいて、話し掛けたら目眩がして‥‥。



‥‥それから、どうなったんや‥?



強い光でも浴びた様に、頭の中は真っ白だった。
何も、思い出せん。

「‥‥ぅ、ん‥」
「華!?」
「‥きん、じさん。」

良かった‥‥。
華はそう言って俺の頬に手を伸ばしてきた。

「あのまま、元に戻ってくれなかったら‥‥」

元に戻る‥?

「華、お前のこの傷‥‥俺がしたんか?」
「‥‥」

華は俺から視線を外して、床を見た。

「そうか‥、俺がしたんか」
「その時の事、覚えてる?」
「いや、何も分からん。思い出せんのや」

ホンマに。
でも、何かが‥‥

「金司さん、全く別人だった」
「え?」
「本当に、あのまま元に戻らないかと思った」
「そんな‥怖いもんになっとったんか?」
「うん。凄く怖かったわ」

そう言いながら、華は本物の花の様に綺麗に笑った。

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