バカヤロウ…でもありがとう

出会い

「いい女なのに♪」初めて言われた

結婚して10年、三人の子供を産み、浮気どころか女などという物はとっくに捨て、学校行事やら保育所行事でくたびれ果てていた日々……。

たまには息抜きをと参加した、学校主催の飲み会…

いつの間にか私の隣にどっしり座り、そんな事をつぶやいたその男は、名前はトシ。娘の同級生の父親で、バツイチの、いわゆるシングルパパだ。
…二人の子持ちでありながら、茶髪に片耳にピアスという、一見遊び人風な大柄な男。

「いい女なのに、もったいねえ…女捨ててるべ」

ドキッとした。
図星だった。確かにお洒落にも全く興味がなく、旦那との営みもしばらくない。何の趣味もなければ、親友と呼べる程の友達もいない。
…読む本と言えばファッション雑誌等ではなく、育児や料理に関するものばかり。自分の服を買いに行くつもりが、つい子供服を選んでしまう程。

私、尚美は年は36才で、小3の娘と年長と年少の息子二人の平凡な主婦。

夫は、ゴルフ場勤務の為、土日も何も関係なく仕事で平日も殆ど休んだ事がない。いや、仕事に行く振りをしてパチンコに行ってしまうような、家庭を人任せにする、そんな48才の、もはやおやじ。
朝は子供が寝ているうちに仕事に行き、夜は閉店までパチンコで、子供が寝てから帰ってくるようなどうしようもない夫だ。

年が離れているせいか、そんなギャンブル夫に嫌気がさしているのか、私は旦那に対して全くの愛情がない。

ただ、子供の為と我慢しているだけのつまらない毎日だった。

白髪混じりの夫とは対称的な若々しいトシに、そんな言葉を言われると、正直ドキッとして、顔がほてってしまった。まあ、お酒を呑んでいるというものの、それとは違うほてりだった。

トシは、四ヶ月付き合った彼女と別れたらしく、みんなにからかわれていた。

「出会いがあれば、別れがあるの!」

…と言って盛り上がっていたさなかだった。


それが、私とトシとの出会い……
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