企画小説
「はい。麻津裏くんどころか、貴方がこの幾年間、育ててもらった母、父と慕った方もアカの他人でございます」
「………そ、んな」
「そして、本日は貴方を預けた時から決めていた、優喜麻津名から東苑堂寺浬津に戻る日なのです」
「!?」
淡岩から出た言葉に、この説明が始まる前に淡岩が言った言葉を思い出す。
“浬津様をこちらへ”
「…ふたりとも……お母さんも麻津裏兄ちゃんも、知ってたの?」
「…知ってたよ」
「さ、浬津様行きますよ」
淡岩に促される。
「…いやだ。急にそんなこと言われたって、私わかんない」
「そんなことを言われましても…ご夫妻だって、来られることを楽しみにされ……」
「うるさいっ!!」
「!?」
麻津名が反論する前に、麻津裏が怒鳴った。
「…あ、いや、えと……今日一日くらい頭を整理させる時間やってもいいんじゃないか?」
麻津裏が最もなことを言った。
「…わかりました。では、明日、本日と同じ時刻に迎えに参ります」
「……はい」
その言葉だけを残し、淡岩は去っていった。