企画小説
三回ノックするのは、この家では麻津裏だけ。
ものごころついたときに、ふたりで決めたのだ。
“お互いの部屋をノックするときは、三回ね”
と――――…
「入っていーよ、麻津裏兄ちゃん」
その声の瞬間、麻津裏が扉を開けて入ってくる。
「……麻津名」
「なあに?」
「そのまんまでいいから、聞いてくれ」
「?」
あまりに真剣に言う麻津裏に、多少の不安を覚えた麻津名。
しかし、次の言葉を聞いた瞬間、思考回路が全停止した。
「麻津名が好きだよ」