りんごゆき
8.fading away



柊くんの涙を初めて見た。



肩を震わせて、きっと私にも気付かれないように必死で声を押し殺していた。



柊くんはいつだって優しすぎた。

他の人が涙を流すぐらいなら、自分が我慢するのなんてなんともないって言っていた。



彼はとっても強くて、とっても弱い人。



『絶対に自分を優先しない』

って意見を曲げない頑固な人。



意地で人前で泣かない私。

心配させないために人前で泣かない柊くん。



彼の涙は私の100倍重い涙。

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