りんごゆき
「この街に似合わねえよ。」
圭祐くんが悔しそうに言った。
「世の中ってのは必要なものばかり消していくな。」
ボソッと隼人くんが言った。
彼らにだって大切な思い出の場所だったんだ。
「大丈夫。
私たちが忘れなきゃ、なくならないから。」
私は自分に言い聞かせるように何度も柊くんの言葉を繰り返した。
それから、私たちがあの場所に行くことはなかった。
あれから何年もたったけど、秘密基地は私の心の端にいる。
時々私を切ない気持ちにさせるんだ。
思い出たちが忘れないでって私にしがみついてるみたいに。