LAST contract【吸血鬼物語最終章】
「おい」
先輩が、何か言ってる。
「おい、葵っ」
でも、何か返事する気にならないし。
先輩だから放っててもいいか。
「葵っ!!何やってんだよ、ボタボタ零れてんじゃねーか」
「んえ?あ‥、本当だ」
放課後の生徒会室。
コーヒーをカップに注いでたら、注ぎ過ぎたみたい。
カップから溢れ出たコーヒーは、机を伝ってポタポタと床に茶色い染みを作っていた。
「お前、重症だな」
そりゃそうだよ。
一番忘れて欲しくない人に、忘れられたんだから。
もう、感覚まで麻痺してきてるって。
「菫が足を踏み外すって‥、珍しいね」
現在の生徒会長こと、桃が書類を眺めながら言った。
記憶が無いから、やっぱり此処には来ないね。と寂しそうに目を細めた桃に、僕は小さく頷いた。
本当、寂し過ぎてどうにかなりそうだ。
もし自分がウサギなら、等の昔に死んでる。
その時、扉が開いた。
スミレかと思って反射的に扉に目をやったが、スミレではなくて‥‥
「‥昨日の‥」
確か、スミレの隣のクラスの鳩羽ちゃんだっけ?