LAST contract【吸血鬼物語最終章】

華は俺の小指に自分の小指を絡めた。
小指にグッと力を込めて微笑んだ華からは、さっきの様な泣きそうな表情は消えていた。

「守れなかったら、殴ってやるんだから」
「ははっ、華やったら出来そうやな」
「五月蝿いっ」

ドゴッと腹にくい込んできた拳は、いつも通り。
俺はこの行動に、酷く安心した。

良かった、いつまでも華のあんな姿見とうないからな。
‥‥痛い、けど。

「でも、気になるな‥」
「何が?」
「葵、ずぅっと俯いて何か考えとった」
「‥そうね」
「何か、またやらかすつもりやないんやろか」
「かもね、あの人の事だから」

もしそうやとしても、俺は何にも口出しなんか出来ん。
何をどうするかなんて、決めるのは全部アイツや。

「さっ、はよ帰って飯にしよか。腹減ってんねん」
「はいはい」

ふと、手袋をしていない華の手が目に付いた。
冷たい空気に曝された手は、少し赤くなっている。
スッと華の手をとって、そのまま自分のジャンパーのポケットへ。

「ちょ、ちょっと‥っ」
「この方が温まるやろ?」
「‥‥‥、まぁ、そうだけど‥」

少し恥ずかしがる華の頬は、手と同じ様に赤くなった。
そっと優しく握り返してくれる手を、俺はさらに強く握りしめた。

何だかんだ言うたって、ちゃんと俺の欲しい反応とか言葉とかくれる。
ちゃんと、愛してるって感じさせてくれるんや。



これが、幸せっちゅうやつなんやろな。



それを感じさせてくれるお前は
誰よりも好きで、愛しくて。

こんなヤツ、もう一生手放せんわ。



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