LAST contract【吸血鬼物語最終章】
気が付けば、世界が変わっていた。
暖かい色をした夕日が部屋を照らし、冬の寒さを一瞬忘れさせた。
ボクに掛けられた布団、ベッドサイドには自分の鞄。
「‥ゆ、夢‥?」
なんて、酷い夢。
悲しかった。
アオちゃんがボクから離れていくなんて‥。
布団から出ると、周りの冷たい空気を直に感じる。
体をブルリと震わせたボクは、ここが何処なのか分からなかった。
窓から周りの景色を眺めると、通っている学校やいつも踊っている公園。
沈んでゆく夕日を見送って、とりあえず部屋から出てみた。
「あ、菫。夕方だけど、おはよう」
「‥お、おはよ。ここ、桃の家?」
「そうなの。体、大丈夫?」
「平気だよ。‥アオちゃんは?」
周りを見渡しても、今一番会いたい人の姿はなかった。
いるのは、目の前にいる桃と、ソファーで寝ている紅だけ。
あんな夢を見た後だから、それがボクの不安を駆り立てて‥‥
「ちょっと出てくるって言って、ついさっき出て行ったよ。もう夕飯出来たんだけどなぁ」
どんどん、大きくなる。
「どこに行ったの?」
風船の様に、膨らんでいく。
「そこまでは‥」
それだけ聞くと、ボクは桃の家を飛び出した。