夢のつづき。
■康

◎前日

金曜日。


一週間の疲れがドッとくる金曜日。


しかも取引先とトラブルがあってその日は残業になり十時すぎにようやく仕事から解放された。


取引先の言い分と上司の言い分をすり合わせて折衷案を出すのには慣れていたが、取引先の担当者が変わっていて一から説明をしなければならなかったのに手間取ったのだ。


結局トラブルは来週へと持ち越しになりスッキリしないまま帰宅するのはもやもやした気分だったが上司の一声で帰宅することになった。


説明や対応は全て康がやっているのに上司の「疲れたから今日はこれまで。あとは来週だ。」という無神経な宣言には正直納得できなかったが部下の康としては諦めざるを得なかった。


書類等の片付けをして会社を出るころには十時半を回っていたが、まだ残っている社員もちらほらと見受けられた。


「お先します。」と声を掛け会社を後にする。


駅のホームには康と同じく残業で疲れた顔をしたサラリーマンやOLに混じって近くの居酒屋で酒を飲んだのか仲間内で大声で喋っている酔っ払いが何人も立っている。


いつもより遅い時間帯だから少しは電車が空いているのだが酔っ払いが多くて帰宅の電車も快適とはいかなかった。


十一時半過ぎに家に着く。


奈津子に「ただいま。」と声をかけてさなの部屋を覗いた。


いつもの事だが既にさなは寝ていた。


小さなさなのかすかに聞こえてくる寝息。


さなとは毎朝顔を合わせるが最近はぐずる事が多くてあまり笑顔を見ていない事を康は少し残念に思った。


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