いとしいひと
このおかしな人は
橋口 直志(はしぐち ただし)と言う名前で。
美容師の専門学校に通う20歳(!)
…意外、3つも年上だったんだ。
「えっと…、さっきから君の髪、すごく綺麗だなって思ってたんだ」
「はあ…どうも」
やっぱりこの人…?
「で、
横を通った時に、君が切ろうかなって言ってるのが聞こえて…
せっかくこんなに綺麗なのに、そんなのすごく勿体ないなって思ってさ。
…もし、君がもう髪に興味がないなら
俺にその髪、預けてくんない…?」
預ける…?
「要するに…切るなって事…?」
「うん。
切っちゃうなんて勿体ないよ。
長いのにそこまで綺麗なのは、君が髪を大切にしてたからだよね?
…駄目かなぁ…?」
あたしが、この髪を大切にしてたのは本当で。
こんなふうに言ってもらえるのは
正直、
嬉しかった。