群青の月 〜『Azurite』take00〜
「 …やめさせる 」
「 ……まだ彼女は飛べてないんだよ
青山さん 」
「 …飛べてない…? 」
「 あの日のまま止まってるんだ
…羽根を拡げる力は
誰かに貰ったんだと思う
でも まだ 彼女は
虚空をひらひら飛ぶだけで
何処に飛んでいいかわからない
だから
彼女の歌は、世界の果てで
今も、さ迷ってる 」
――『Azurite』の歌詞カードを
灰谷は大切に、気を使いながら
CDのクリアケースから抜き取り
そして、俺の前に置く
CD自体は、
買ってから封を開けた
けれど少し聞いてすぐ
また棚に、戻してしまったし
歌詞カードは一度も、拡げていない
灰谷は、歌詞を再び手に取り
それをゆっくり、拡げながら言った
「 青山さん…俺ね
デビューしてからのアズに
会った事があるんだ 」