群青の月 〜『Azurite』take00〜
「 ――― 捕まえるも何も
昨日、知り合いました 」
そう正直に言うと
「 ……人にはさ
水が合う場所ってのがあるじゃない
人がどうこう言おうとさ
でも、あの子みたいのは
『普通』の場所に居られないから
うろうろするだろ
下に落ちるのが当たり前なんだが
ああいう子は
そこにも自分の場所がない
…そうすりゃあ
一番てっぺんに、行くしかない 」
そう言って竹田さんは
夜空を指さした
「 …そんなタマじゃないと思いますよ
飯食わせようと、抑えたら
唸って蹴り入れて来ましたから 」
ほほ と竹田さんは笑う
「 …なんかあったら言って来なさい
またね 」
「 はい 」
お辞儀をすると、竹田さんも頭を下げ
ゆっくり公園を抜け
独りで横断歩道を渡って、帰って行った
ラーメン屋から湯気が立ち始めて
「 塩ひとつ 」と注文する
「 へい 」と言った後
「 …竹田さんのお知り合いですか? 」
そう聞かれ
「 家を借りています 」と答えた
「 もしかして、丘の上の? 」
「 はい 」
親父は黙々と作業し、俺が食い終わり
お代を払おうとすると
「 あんたはずっとタダで食いに来な 」と
歯の無い顔で受け取らなかった
…そんな事を言われると、なんだか初めて
竹田さんの存在感を感じてしまって
あの言葉が、信憑性を帯びてくる
―― 明日少し、羽交い締めにしても
風呂と飯、
食わせないといけないなと思った