群青の月 〜『Azurite』take00〜
曲が始まりホールを見ると
電車の中の様に、人が揺れていた
誰も他人の事など気にして居ない
意識がまっすぐ
こっちに向かって来るのが判る
照明の赤が、激しく揺れ動いて
ステージの上も
観客も、全て血に染まった様になる
ステージ前の黒の鉄柵
後ろからの波で、前列が思い切り押され
両端に居たスタッフが
パイプの前に走り、観客を抑えた
ふと見ると、その鉄棒を必死に握って
ちびっ子が灰谷を凝視している
最後の曲
『You』になると
激しい2ビートのリズムに合わせて
観客の脚が、音を立てた
赤池さんがカウントで叫び
俺と緑くんはコーラスでシャウト
観客席からも、叫び
灰谷の
絞る様な掠れたその声は
詩の内容も含め、
今の所全て『彼女』への恋文のようだ