姫守の城 (仮)

03

 智が好むもの。人が創ってきた跡。それは、本であり、映像であり、絵画であり、楽曲であったりする。
 他人に「趣味は?」と問い掛ければ大半はどれかを口にするだろう、それ。他人に理解されない性癖を自ら口にだす人間は、まず、いない。僕の知る限り、余程の自信家、もしくは、愚か者ぐらいだ。





 早織さんとの愛の語らいが存外早く終わったので約束を果たすべく僕はビルの屋上、と言うか最上階に来ている。
 このビルディングは性質上部屋に水場がない。そのため食堂と浴場は最上階に在るのだ(しかもかなり豪華な造り)。
 僕はカレーを作りに来た訳だ。
 そもそも僕の料理なんてのは所詮飯事にすぎない。そのうえ智に合わせて作るもんだからなんとも味気ない始末。米が炊ける前に作業は終わったってしまった。
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