姫守の城 (仮)

01

「キミの思考回路はまったくもって不可解だね」
 
「随分とまぁ否定的だな」

 人参をカゴにいれた。

「違うね。肯定してるんだよ。キミの変人ぶりをね。ぶらぁぼう」

 人参をカゴからだして戻した。

「否定は出来ないけど」

 人参をカゴにいれた。

「十全。キミが出来る否定なんて全てにおいて一もないね」

 人参をカゴからだして戻した。

「智…」

「話かけないでほしいね。阿呆がうつる」

「カレーに人参は必要だと思う」

「必要?必要ね?そう必要。麻婆豆腐に豆腐。麻婆茄子に茄子。麻婆春雨に春雨。は。必要。と言うんだよ。僕に人参は不要だね」

「………」

 人間、誰しも譲れないものが、一つや二つあると言うが、僕のそれには人参は含まれてない。だが、智にとって人参は譲れないものなのだろう。
 そう思うことで僕は意を介した。なにも人参一つで智の毒舌を加速させる必要はない。人参を諦めて買い物を終えることにした。
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