ハスキー
『じゃあな。
また明日,ナル』

やっと握ってた手を解放してくれた。
あたしは家に帰る。




面倒な約束したなぁ...
帰り道そんなことを考えながら歩いてた。
いつもはあんなに取り乱して話したりしないのに。
あんなに感情に流された話し方はしない。
あんなのいつもは受け流すのに。


なぜか慌ててしまって。
受け流せなかったんだ。
なんでだろ。




あぁ,あの声だ。
あの声があたしを呼んだとき
なんか少しドキってしたんだ。


でもね。
なんとなくだけど
あの声が

孤独に聞こえたんだ。

だから
あたしに似てるから
ほっとけなくて。


あの掠れた声
嫌いじゃないかも。


『まぁいっか。』

そうつぶやきつつ,あたしはつい10分前に歩いてきた道をまた戻る。
歩いていると春の暖かい日差しがキラキラ少しだけまぶしい。

あいつ...シュウだっけ?
なんかキラキラした笑顔だったよなぁ...
なんかイヌみたいにキラキラしてさ。

ふっと一人笑いして家に帰る。

夜はまた仕事だ。
明日は職員室。


あたしはまだ知らなかったんだ。
何でシュウをこんなに気にしてたのかを。



そして後でもう一つ知ったんだ。
人生捨てたもんじゃない,って。
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