【長編】Sweet Dentist
俺の予想通り、あいつはまだカフェにいた。しかも大量のケーキを目の前に幸せそうに微笑んでいる。
あんな甘そうなのを目の前にして、何であんなに幸せそうに笑えるのかがわからねぇよ。

ちょっと声をかけてから帰るつもりだった。

『あのくらいで営業妨害になるなんて、Yasuhara Dental Clinicも大した事無いみたいですね。』

あいつが言った あのセリフはちょっとカチンと来ていたんだ。
見合い相手が来たからあの時は突っ込んで言う事を止めたが、どうしても何か言ってやりたくて、ちょっといじめてやろうと思ったんだよな。

こんな事あいつにバレたらまた小学生じゃないんだからとか言われそうだ。

まあ、大人気無いってわかってるんだけどさ…。



ちょっと驚かせるだけのつもりだった。

千茉莉が真っ赤になって驚いたらすぐに止めるつもりだったんだ。

彼氏もいなくて経験も無いみたいだったから、抱き寄せて至近距離で脅したらすぐにビビって『ごめんなさい』位言うかもしれないと思った

絶対に無いとは思ったが、もしそこいらの女たちみたいに自分から擦り寄ってくるようなら
『バーカ何を期待してるんだよ』って言ってやるつもりだったんだ。

まあ、案の定それは絶対に無かったみたいだけど…。



だけど…



あいつが泣くなんて思わなかったんだよなぁ。

かなり怒っていたからな。でも、まさかキスも初めてだとは思わなかったんだよな。

しかもほっぺにだぜ?あんなに怒って泣くなんて思いもしなかった。



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