初恋~俺が幸せにしてみせる~
☆★44★☆
その夜から2ヶ月

北川さんが入院した

もう二度と自宅には
戻れないとわかっていた

どうしても自宅での
最期は迎えたくないと
北川さんは言い張った

それまでの2ヶ月は
千穂と北川さんは
会ってはいない

あの夜が最後だった

2人にとって、最後の
愛を確かめる夜だった

最期を迎えようとする
北川さんの顔は
2ヶ月よりもかなり
やせ細っているように
俺には映っていた

もちろん入院する部屋はVIP専用の部屋

そして俺は担当医

俺が最期を看取る

千穂のかわりに
ちゃんと最期を
見つめようと思う

俺は、北川さんが
入院した事を千穂に
告げる為に、千穂の
部屋に来ていた

北川さんの様子を
思い出しながら
千穂に話していると
なぜだか急に泣けてきた

苦しくて、切なくて

千穂に背中を向けたまま俺はそっと呟いた

『千穂は受け入れ
られるのか?』

その瞬間、鼻の奥に
痛みが走り、涙が出て
しまいそうになった

それを堪えながら
千穂の答えを待った

千穂の視線は感じた
ものの、言葉は返ってはこないままだった

受け入れようとしても
受け入れられないのか

それともすでに、覚悟が出来ているのだろうか

情けないのは俺だけ
なのかもしれない
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