初恋~俺が幸せにしてみせる~
2人が抱えていた罪の
大きさ、幸せの大きさも全部知る事が出来た

一言で辛いと言う事も
出来ないような2人を
俺はちゃんと受け入れる

俺は俺が愛した女の
全てを受け入れる

2人が最後に会った
あの日に見上げた夜空は星も出ていなかった

千穂の心のようで…
北川さんの心のようで…

未来を見失った2人の
心のような空だった

俺は北川さんの命を
救う事が出来ないという不甲斐なさを感じた

後悔している暇はない

俺が出来る事は、2人に最後の幸せを捧げる事

そう思えた

北川さんの言葉には
一つ一つ重みがあった

『千穂を頼みます』

何度も言う北川さん

本当に安心したように
千穂のその後を不安なく旅立つ事が本当に
嬉しそうな顔をした

複雑な関係の俺と
北川さんだったけど
そんな事も感じない

きっと出会い方が違えば良い友達になれたと思う

『それでは、仕事に
戻りますので』

立ち上がった俺に
最後の北川さんの言葉も

『千穂を頼みます』

というセリフだった

病室の扉を閉めた
その瞬間だった

なぜか涙がこみ上げて
トイレに足早に向かった

声を押し殺して
トイレで涙を流した
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