初恋~俺が幸せにしてみせる~
☆★45★☆
それからの北川さんは
日に日に弱っていくのが目に見えてわかった

もうすぐ旅立つんだと
俺にはわかった

それなのに北川さんは
俺が病室に入っていくと笑顔を向けてくれていた

無理に笑わなくても
いいはずだったのに

その笑顔が俺の気持ちをとても切なくさせた

俺は決めていた

最後に千穂と北川さんを会わせるという事を

2人は口に出しては
言わないけれど、絶対
気になってるはずだし
会いたがっているはず

愛し合う2人が最後に
言葉を交わすのを
手助けするのが自分の
役目だと思っていた

俺は湯川さんに声をかけ北川さんに千穂を
会わせるつもりだと
小さな声で伝えた

湯川さんはとても
心配をしていて

『どうやってあの2人を会わせるのですか?』

と不安げに聞いてきた

俺が奥さんを呼び出して話をしている間に
病室に千穂を向かわせるつもりである事を告げた

『大丈夫でしょうか?』

『湯川さんが廊下を
見張っていてくれれば
上手く出来るはずです』

『私ですか?』

『他に誰が出来ます?』

『私にしか出来ない
お役目のようですね』

湯川さんは俺の考えを
理解してくれたようだ

この湯川さんが奥さんといい関係だなんて
今は信じられなかった

でもきっと北川さんの
千穂に会いたい気持ちを理解しているはず
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