初恋~俺が幸せにしてみせる~
☆★46★☆
北川さんが旅立った翌日少し高いお酒を買って
千穂の部屋に向かった

千穂は突然現れた俺に
驚く事もなく、それが
何を知らせるのかを
わかっているようだった

『あの人が旅立ったよ』

千穂は我慢していた

必死に受け入れようと
葛藤しているようだ

それ以外、何をどう
話していいのかも
わからなくて、俺は
グラス3個に酒を注いだ

1つは北川さんの分

こんな状況じゃなければ有り得なかった場面だ

北川さんを失った千穂の辛さや切なさが全部
俺を襲ってくる

千穂は悲しんでいる

北川さんが居なくなってその現実を受け入れる
それまでの時間が
必要なはずなんだ

部屋は静まり返っていた

シーンとした部屋で
ゆっくり酒を飲んでいた

なぁ千穂

お前は今何を考えてる?

何を思っているんだ?

俺は目の前にあった
千穂のタバコを1本
取り出して火をつけた

ゆっくりと煙を吐く

この匂いで千穂は
北川さんを思い出す

それはわかっていた

わかっていたけれど…

我慢しなくていいよ

俺の前で我慢はいらない

もう大丈夫だよ

そう思っていると案の定千穂は泣き出した

ポロポロと涙を流して
糸が切れたかのように
泣いている千穂を見て
悲しみが伝わってくる
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