~異種魔法異能力挌闘SFファンタジー~ 帝竜 -ミカドノリュウ- Ⅱ 竜と炎の王
「クッソが! おい、アズ! さっさと立て!!」

 麟紅は自分が倒したアズラクを乱暴に起こすと、襟首を掴んだまま女がいる方向と反対に向かって走り出した。

「ちょ、ちょっと待ってよ!!」

 角を二つほど曲がったあたりで、アズラクは息せき切って麟紅を止めた。

「そ、それってホントに予知眼!? 麟紅くんは魔法使いなの!?」

「本物デスヨ! それと俺ぁ正確には魔法使いじゃねぇ。使えんのはこの“眼”だけだ」

 黄水晶(シトリンカラー)に輝く右目を押さえ、麟紅は歯を軋ませた。

「ウソ、だよね……だって伝説の予知眼だよ! 現代で使える人はいないはずじゃ……!!」

「うっせぇ! 今こうして現に使える奴が目の前にいるんだから黙って信じてろ!! それと今は詳しく説明してる暇はねぇんだよ!! さっさとさっきの日本刀女を倒さねぇと……!!」

「誰を倒すだってぇ?」

 女の声と共に、猛烈な突風が路地裏に吹き荒れた。

「クッソ! もう来やがった!!」

「まだあたしの名前を教えてなかったねぇ」

 女はくすくすと笑い、その鋭い相貌で麟紅とアズラクを睨んだ。

「秘剣、流麗柳葉(るれいやなぎば)流剣術。御柳蛍(みやなぎほたる)。<黄金の暁>じゃ“月(ザ・ムーン)”って呼ばれてるよ」

 御柳と名乗った女はさらにくすくすと笑い、手にした刀を掲げた。

「あたしの愛刀、月光だ。よろしく頼むよ」
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