【短編】桜花爛漫

「いいから、ここを離れないなら隣座れば?」

「おう、じゃ、遠慮なく」


ようやく視界から外れたヒデの顔の後に、桜色の空が広がる。

風が吹いて揺れる花びらが、心地よい音を立てる。

あっ……
サクラ……散る……。



「なぁ、結依」

「何?」


ベンチに座っている私の隣にドカンと腰掛けたヒデが話し掛ける。

私は空を、
桜を見上げたまま。



「別れたって本当?」


……風が吹く。

風に舞う桜の花。


一片、二片……
何枚もの花びらが散る。


「だったら、何?」

「別に」

「ふ〜ん」


儚く散った恋――。


桜色から白色に変化する桜。

この想いは白色。

散り間際の桜と同じ。


未だ捨て去れない恋心……。


「あーっ、違う。こんなこと言いたいんじゃなくて」


突然の大声にさすがにヒデに視線を向けると、頭を掻き毟ってうなだれる姿。

下から覗き込むように私に顔を向けると、


「ごめんな……」


小さく呟いた。




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