Melty Kiss 恋に溺れて
「都さんは、私に総長になるなと仰るんですか?」

大雅が淋しそうに、私に問う。
大好きな人を、悲しませた自分に腹が立ってきて、私は慌てて頭(かぶり)を振る。

「違うわ」

大雅の瞳を真っ直ぐに見据える。
彼の妻の座を勝ち取るのは誰なのだろうか。

むろん、仲間内では賭けなんてのもやっていて。
一番の有力候補は、青龍会の若頭、青山家の長女、青山瑠璃さんだってことは知っている。

茶道も華道も嗜む、和風美人。
二十一歳。

大雅にすごくつりあうってことも、嫌なほど分かってる。


「でも、嫌なのっ。
大雅に、奥さんとか出来たら、その」

私は慌てて唇に手を置いた。

困った。

感情が高ぶっているのか、余計なことを口走ってしまう。

大雅はその口許に柔らかい笑みを浮かべて、口に当てている私の手をとった。

「続きは何ですか?」

蜂蜜に砂糖をまぶしたような、とろっとろに溶けそうなほどの甘い声。
これはもう、私にとっては自白剤のようなものだ。

「今みたいに大雅に構ってもらえなくなるんでしょう?」

と。

ここ数ヶ月、ずっと胸に秘めていた想いを、仕方なく私は口にした。
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