Melty Kiss 恋に溺れて
気づかないうちに、手は震え頬を涙が伝っていた。

大雅は許してくれるつもりなんてないみたいで、キスできるくらい近くにその顔を寄せる。
いつも、甘い笑みを携えているとは思えない、冷たい表情で。

「それで、俺から逃げ出せるとでも?」

倒れるかと、思った。
私には決して向けなかった、刃のように冷たい口調。

私は慌てて口を開く。

「だってっ。
だって、お兄ちゃんは結婚するじゃないっ。
私を置いて、結婚するわっ。
一人淋しく残される前に、彼氏を作ろうと思って、何が悪いの?」

私だけにしか許されない、彼への呼称を使うことで少しでも優しい彼を取り戻したくて。

ただ、必死だった。

一瞬。
大雅が天を仰ぎ、瞳を閉じる。

そうして。


唐突に。
キスされた。

いつもみたいに、触れるだけのそれじゃなくて。
貪るような、深い深い、私の知らないキス。

嵐のような、キス。

ひたすら翻弄されるほかないような。
卑猥な音の漏れるキス。
唇から、二人の唾液が混ざって滴り落ちるような、濃厚なキス。

私の口腔が、彼の舌にまるで犯されているような錯覚にすら陥る。
意図しないほど、甘い声が勝手に口から漏れるほどの、乱暴なキス。



そうして、


怖いほどに、甘い、キス。
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