クライシス
次にドアに近づいたら、撃ちながら外に出よう。そして、そのまま逃走する。人質としてここの職員を手に入れるか。そう思いながら次の射撃の為に構えた。
ドアの外に居た捜査員は無線を取り出した。そしてニヤリと笑いながら、小声で囁く。
「赤木係長」
その無線を聞いて赤木は頷いた。そして、彼も無線に呟く。
「本部」
『こちら、本部』
本部では大阪府警の首脳陣が集まる中、赤木の無線に注視する。そして、引き続き赤木きらの無線が届いた。
『二段階目への移行を願う。待機しているゼロチュウと出動願いたい』
その言葉を聞き、本部に居た警備部長は大阪府警本部長を振り返った。本部長は頷く。
警備部長は前回、枯れた声を少し気にしながら叫んだ。
「SAT第二小隊、突入!」
上空をホバリングしていたヘリが一機有った。そのヘリは警備部長からの無線信号と共に一気に高度を下げた。
ヘリに乗っているのは全身黒色のアサルトスーツに防弾ベスト、防弾バイザー付きヘルメットを装着していた。
ヘリが高度を下げて、調度、事務所の上空五mの地点に止まった。そして、中に乗る隊員がヘルメットに付いているマイクに呟いた。
「SAT第二小隊、突入します」
その声と共にヘリから下がったロープをつたい、キムが居る部屋の真横まで降下する。と同時に、ビルの入口に止まった装甲車からもアサルトスーツの隊員が降り立ち、一気にビルに突入して階段を駆け上がる。
大阪府警特殊急襲部隊、SATは古参の警察官からは『ゼロチュウ』と呼ばれていた。昔、機動隊の零中隊として存在していた名残だ。
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