クライシス
十二月二十一日九時十分大阪府警本部
「アンニョハセヨ」
雄介が本部の会議室の部屋に入り、コーヒーを飲んでいる二谷と三宅に挨拶をした。
他の者達は朝から皆が忙しそうに走り回っていた。
「おはよう、よく眠れたか?」
二谷も朝鮮語で言う。
「いいえ。いつもの様に追っ手に襲われる気がして眠れませんでした」
雄介はたどたどしい朝鮮語で話す。
「いつもの事だな」
三宅も朝鮮語で答える。
雄介は朝鮮語を学ぶ為に毎日朝鮮語で会話を行っていた。最初は全くヒヤリングも出来なかったが、今では会話も出来る様に成った。
「あと、一つ気になった事が有ります。昨日、ヒヤリングの勉強の為に北朝鮮のニュース番組を見ていました」
雄介が一生懸命朝鮮語を話す。
「それで?」
三宅が聞く。
「はい。その際に労働党の副委員長のチェ・イルソンと言う人間が演説を行っておりました。その男が興味深い事を言っていました」
「固いなお前の言葉は」
二谷が笑う。
「すみません。話を続けます」
雄介が少し笑い続けた。
「チェは反日感情が大きく、日本に再び原爆が落ちれば良い、そう言っておりました」
雄介の言葉に二谷は頷いた。
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