クライシス

救出

―― 一月一日十二時二十分 京都府舞鶴市――
 舞鶴港に浮かぶ海上自衛隊が保有する、あたご型イージス艦『ひえい』がゆっくり動き出していた。それは、いつも通りの演習を思わす様な動きであった。
 統合幕僚長から緊急指令を受けて僅か二時間で雄介を救うべく、ひえいが動き出した。異例の早さである。
 もちろん、普段の訓練の成果でも有るが何より、幕僚達の密談で既に作戦が練られていた。
 ひえいの艦長である富山一等海佐は艦長席に座りマイクを握った。
「第三護衛隊ひえい総員、よく聞け」
 富山艦長の声が艦内に響く。全員が作業を止めて艦長の話を聞いた。
「我々の任務は北朝鮮に居る邦人の救出だ、これは訓練では無い、危険な任務だ。だが、我々は北朝鮮との戦闘は一切にせずに作戦を遂行しなければ成らない」
 富山艦長の顔に緊張が走る。彼はマイクを握りしめた。
「命懸けの任務を行った人間だ……!我々も命懸けで救出する……!以上!」
 それだけ言うと、マイクを置いた。艦員達はそれぞれ作業に入る。
 北朝鮮との領海付近までは明日の朝までには到達出来る。とにかく無事に任務を終えたい。そう思い富山は目を閉じた。






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