クライシス
―― 一月八日二十二時十五分 大阪市内シティホテル――
 北朝鮮工作員のイ・ホンミンは一人ホテルの一室にいた。彼の作戦の決行は明後日であった。
 なるべく韓国大統領の近くでウイルスを散布しないとならない。そして、自分は感染する事無しに北朝鮮に帰る。その為に彼は一人の警察関係者に成りすました。裏切り者のキムの処分もした。
 だが、テロの決行の前に、しなければ成らない事がある。それは市橋雄介への復讐、であった。自国が日本に舐められないタメにも彼に復讐をしなければ成らない。だが、奴への警備は厳重だ。
 彼は市橋雄介の経歴書の横に、一枚の写真を並べた。何も本人を始末しなくても、復讐材料はたくさんある。
 彼は笑う。その写真には女が写っていた。それは、雄介の最愛の、女性であった。



























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