クライシス

選ばれた男

11月16日04:25

東京都千代田区首相官邸・・・


「大統領!お願いします!日本の危機なんです!」


桜井総理は受話器を握りながら叫んだ。


<桜井総理・・・お気持ちは分かりますが・・・我々も同盟国で有る日本の為に協力は惜しみません・・・が・・・>


アメリカ大統領は言葉を止めた。


<だが、フュージョンウイルスの研究は今はしておりませんので・・・ウイルス本体もワクチンも我が国には有りません・・・>


桜井総理は拳を握りしめた。


さっきから、この問答の繰り返しである。


楠木教授曰く、フュージョンウイルスの研究開発は北朝鮮には不可能だと言う。


ならば、アメリカからの流出以外有り得ない。


だが、アメリカは無いの一点張りだ。


理由は分かる・・・平素ならば桜井総理も納得したであろう。


が、今は緊急事態だ。


<とにかく、我が国でもラングレー(CIAの本拠地名)を使って出来る限りの協力は致します・・・>


そう言って大統領は話しを終えようとした。


「・・・分かりました・・・ご協力を・・・お願いします・・・」


桜井総理はそう力無く呟くとホットラインを閉じた。


受話器を置いて目頭を抑える。


久しぶりにタバコが吸いたくなっていた。
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