私だけのスーパーマン
―Side 荒川泉―
『別にあんなふうに言わなくてもいいだろ』
店が終わり、掃除をしているとタツが言う。
『何が?』
タバコを吹かすタツは目を細める。
『すみれさんだよ。
お前のお母さんの話、すればよかっただろ。』
何言ってんだ…コイツ。
『あんな話、できるワケねぇーだろ。
……重すぎる。
だいたいあの話したらすみれさん、俺のとこに来てくれなくなる』
『んなこと分かんねぇーだろ』
タツは相変わらず目を細めたままで。
分かるよ、分かる。
必ずあの話をすればすみれさんは俺のところを離れていく。
お前ぐらいだよ…タツ。
俺の全部を知ってて、それでも一緒にいてくれるのは。
―Side 荒川泉 終―