スカーレットの雪
……………
慌ただしかった病院の廊下が、いつの間にか静かになった。
見えているようで何も見えてない虚ろな目の前に、不意に誰かが立つ。
ゆっくり顔を上げると、そこにいたのは奏ちゃんのお母さんだった。
「…緋那ちゃん」
おばさんは泣き腫らした目であたしを見つめて、そっとそれを差し出す。
「奏多の上着のポッケに入ってたの。多分…緋那ちゃんにだと思うから」
おばさんから差し出されたのは、ちいさなピンキーリングだった。
確かこれは、今日行ったお店に売ってたもので。
奏ちゃん、いつの間に買ったんだろう。
「…つけてあげて」
そう言うと、おばさんは再び集中治療室へと向かって行った。
そういえばさっき、先生が言ってた。「ご家族の方は、お入り下さい」。
…いくらあたしが馬鹿でも、その言葉の意味することくらいわかる。
おばさんに手渡されたピンキーリングを握りしめて、あたしはゆっくりと立ち上がった。
元はシルバーだったはずのそのリングは、奏ちゃんの血の色で半分赤く染まってた。