スカーレットの雪
「…奇跡って、あるんですね」
不意に松本さんが言った。カルテの整理をする手を止めて、彼女の方を向く。
「危篤だった男の子の容体が急変したのは、彼女が飛び降りた時間だったんです。そして…二人が息を引き取った時間も、同じでした」
「…うそ」
「まるで…二人、手を取り合ってたみたいに。とても…穏やかな顔で…」
すんと、松本さんは鼻を鳴らした。看護師歴の長いあたしでも、こんな奇跡は初めてだった。
カタンと立ち上がり、彼女の肩を優しくたたく。そのまま、視線を窓に送った。
「…雪だわ」
外は、いつからか雪が降っていた。
「…ホワイトクリスマスになりますね」
顔を上げた松本さんは、小さく言った。いつの間にか日付は変わり、今日はもうクリスマスイブだ。
柄にもなく、この雪は、彼等のために降っているんだと感じる。
彼等の幼い恋を、優しく包んでくれているのだと。
遠くからサイレンの音がした。急患が運ばれてきたのかもしれない。
すぐにあたし達は、現実に戻っていく。急いで受け入れ体制に入った。