スカーレットの雪





……………


にわかに騒然とした院内も、今はひっそりとしている。

今日起こった出来事をなかなか受け止めることもできなくて、気持ちを落ち着けるためにもカルテの整理をしていた。

そこに、松本さんが戻ってきた。彼女は、今日事故で運ばれた患者さんを見ていたはずで。


「…どうだったの?」

わかっていたけど尋ねてみる。聞かずにはいられなかった。

微かに目を腫らした彼女は、小さく首を振った。

「女の子も…?」
「…はい」


松本さんはまだ配属されたばかりの新人なので、今日の出来事はあたし以上にこたえているはずだ。


「…さっきまで、警察の方が来てました。調べた結果、やっぱり…飛び降り自殺、だそうです」
「…そう」
「彼女…事故にあった男の子の、恋人だったそうです。男の子の母親も言ってましたが、やっぱり…かなり、ショックを受けてたみたいで。それが、原因だろうって…」


事故で男の子が運ばれてきてから数時間後、病院の屋上から一人の女の子が飛び降りた。

警備員さんが見つけた時はまだ意識があり、微かに男の子の名前を呼んでいたらしい。その事から、彼女の身元が判明した。

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