かけがえのない唄
「はい、完成。こんな感じはどう?」



そう聞きながら紙を返すとと男三人が、小さな歌詞の紙を覗き込む。



カッコイイと世間で言われてるMoon Lightでもむさ苦しいと思ったのは誰にも言えないなと思った。



「あほ妃菜なのに、やっぱ歌詞は上手いな」



また健ちゃんがあほと言う。貶すか褒めるかどっちかにしてほしい。




「あほは余計だってば。でもほとんど純のだし、いいまわしとか語尾変えただけだし」



そう。今回は純の歌詞が結構よかったし、ほとんどかえていない。



「んーやっぱ、妃菜だな」



悟がしみじみいうから、なんかむずむずして、なんか恥ずかしかった。





「サンキュー妃菜。よっしゃ、歌うから、聞いてよ」




そう言って、歌い始める純。






やっぱり、純は卑怯だと思う。




こんな声で歌われたら、誰だってファンになっちゃうし




好きになっちゃうよ。





凄いなぁ、と思いながら、またファンが増えるのかーと思うと




喜ばなきゃいけないはずなのに、なんか嫌だなーって思ってしまう。




ペアリングを見ながら、




『あたしは純の彼女だから大丈夫』




って。





今は幸せの為に耐えなきゃいけないんだといい聞かせるしか出来なかった。





でもやっぱり『今』は幸せで。
『未来』に全く思ってもみなかったことが、起こるなんて、




あたしはまだ知らない。





< 24 / 36 >

この作品をシェア

pagetop