かけがえのない唄
すうっと涙が頬を伝った。
その涙を拭って、あたしは言葉を続ける。
「信用してなかった訳じゃない。ただ、純達は芸能人だって、芸能人は夢を与える仕事だから、純達のファンである圭織の夢を壊したくなかった」
何度も言おうとして、言葉が喉まで出かかってのみこんで、やっぱり純とあたしが付き合ってるって現実をいう事はできなかった。
「それでも……っ!あたしは言って欲しかった」
その圭織の『本音』を聞いて、あぁ、あたしは間違ってたんだなって教えられた。
夢を壊す訳じゃなかったんだ。
と。
「ごめん」
ホント、ごめん。
圭織の気持ちを踏みにじってしまった。
「ちょっとだけ、時間ちょうだい」
予想外な言葉だった。
「気持ち、整理するから。また妃菜と親友になりたい」
「うん」
あたしは頷くしかなかった。
あたしが悪いとはいえ、圭織の言葉はあたしの心をぐさっとさした。
多分、圭織も同じ痛みなのだろうと、ぐっと我慢した。
あたしは
弱かったんだ。
ねぇ、強く、なりたいよ。