群青の街
「ハル、ですね。」

先程よりか随分と落ち着いた声で、タナカがそういった。

「……ああ、多分な。」

「…これで5件目ですよ。」


そう、ハルという殺し屋にやられた殺人事件は、これで5件目に上った。


「しかし名前だけじゃ指名手配はできんからなぁ…。しかもやられたヤツは全員、元指名手配犯だ。それを公表すりゃ、オレ等の威厳は失われる。」

「それが何だっていうんですか!やられた相手が誰であれ、あいつが連続殺人犯であることに変わりはないじゃないですか!」

若さ故の台詞が返ってきた。タナカはまだよくわかっていないのだ。この組織のことも、この街のことも。その知識の低さでアイツに立ち向かったところで、返り討ちにされるのがオチだ。

…相手は殺しのプロ。一般人が、怒りや憎しみなど感情の流れに身を任せて起こすそれとは違う。これは、冷静に、迅速に、起こされるモノだ。

相手の足取りなど掴めようもなければ、足取りを例えば掴めたとして部下を何人も向かわせたとしても、やられるのが目に見える。


「胸の痕調べろ。どうせ、いつもと同じだろうがな。」


そういって、立ち上がった。


部屋の中をざっと見渡して、荒らされた形跡はない。今回も、ここから《ハル》に関する情報は何一つ上がらないだろう。

ーーーったく、参っちまうよなぁ……



今日何度目か分からないため息を吐き出した。それと同時に、ズキズキと頭が痛み始める。


目を瞑り、オレも歳かな、などと思った。


脳裏には、まだあの少年がチラついていた。




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