主従関係。
あれから、迷路のような廊下をスルスル進み、大きな部屋に案内され、
『坊ちゃまが先にお待ちです。』そう言って執事は去っていった。


−コンコン。
(ぅわ…緊張〜。)

『はぃ。』

−カチャ

入ると、ソファーに構えている一人の青年。

ん?…よく見ると…

『し…城崎センパイ?!』

あまりにも衝撃的過ぎて、頭がよく回らない。
私の声に振り向いたセンパイは少し驚いた顔をする。
『!…あなたはあの時の。』

(もしかして…覚えてて、くれた?)
その言葉につぃ、淡い期待をしてしまう

『…忘れもしねぇ。俺が親切にしたのに礼の一言も言わなかった1年。』

『なっ…あ、あの時は急いでてソレどころじゃ無かったし、もう2年ですっ!
ていうか、口調変わってるし?!』


『俺の親切に、急いでたも、へったくれもあったもんじゃねぇんだよ。
ソレに、素がこっちだし。』

素がこっちだし…

素がこっちだし…

素がこっちだし…


あぁ。私の城崎センパイが崩れてく…

白馬の王子様なんて信じるとロクな事が無いのね。


『あ〜ぁ。女が来るっつーから楽しみにしてたのになぁ…名前は?』

『佐々木…花梨。』

ムカつく言い回し。
スッゴク嫌そうな顔で答える。

『今日から佐々木は俺のメイドな。』


『…。


はぃ?』

もぅ、センパイのキャラ変わりすぎて信じられません。


『お前、こんなトコにタダで住まわせてもらうつもりだったのかよ。』

微笑するセンパイ
…絶対私の事馬鹿にしてる。



『…分かりました、何でもやりますよ。』

『なんだ。』
私がもっと嫌な顔をするのを、待ち望んでいたと言うような落胆。

まぁ、ここに来たからには大体の覚悟は決めてた。
それに、ただ住むより、住み込みで働いた方が、こちらも少しは気楽になるというものだ。
父はメイドを雇わない人だったので、料理や洗濯等、家事には多少の自信がある。


『そうと決まれば…矢竹!』
『はぃ。』

名前を呼ぶと直ぐに現れたのは、先程出迎えてくれた執事。どうやら矢竹さんと言うらしい。



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