善と悪

鉄の味

それにしても退屈だ。
退屈すぎて、身体がなまる。
「んー…眠い…」
ふぁ…
大きなあくび。
最近人の皮を被った悪魔が多すぎる。
退屈しのぎの頼みの綱。
このドラム缶型テレビの中身にも見飽きてきた。
「あーもう時間じゃん。」
毎週の楽しみがこのドラマ。
ニコニコしながら、チャンネルを変える。
中身は100%不倫の話。
いわゆる昼ドラ。
ちょうどOPから始まった。

その時と同時にドアが開く。
まったくタイミングが悪い…

「こんにちは…」
今日七十人目の訪問者は小さな女の子。
「こんにちは^^小さい紙は持ってるかな?」
「この事?」
そういうと小さい紙を取り出した。
「そうだよ^^見せてもらっていいかな?」
「うん。」
女の子は顔を縦に振り、紙を渡した。

『三川 愛子』

名前と顔の一致。
今日初めての人間のお客さんだ。

「訪問理由は何なの?あいちゃん^^」
「特にないよ。お母さんを探すの。」

「お母さんを…」
犬井はあいちゃんをじっと見つめた。
あいちゃんの首には縄で縛られたような圧迫痕。
「あいちゃん。どうやって死んだか覚えてる?」
「お母さんが、『ごめんなさい』って言って、それから覚えてないの。」
やはり。
母親が自分の娘を殺したのだ。
そう言うことも解らず、女の子は母親を探そうとしているのだ。

「あのね…」
「あれなぁに?」
あいちゃんは犬井の後ろにある大きな鎌を指差した。

あれは悪魔を戒める道具だよ。

なんて小さい子にいえなかった。

「少し此処で遊ぼうか。」
犬井はニコッと笑って見せた。
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